千葉県柏市からオリジナルレザーを発信するブランド「NUIZA縫EMON(ぬいざえもん) 柏」#2

柏のバッグブランド「NUIZA縫EMON(ぬいざえもん) 柏」その2です。その1はこちら

地元密着でユニークなアイテムを提案してきた「ぬいざえもん」。実は最近、こちらのバッグが「柏の新しい名産品」として、取り上げられる機会が増えました。

その理由は、“革そのものからオリジナル”という、他にはない大きな特徴があるからです。代表の飯島さんのお話しです。

「自分たちのブランドが、ほかのアトリエ併設型のショップと差別化するためには、何ができるだろうと色々と試行錯誤しました。
そこで、革そのものの素材から作ってみることを考えました。何かローカル発のオリジナリティが出せないかと、市役所等に相談に行くと『地元に養豚場がありますよ』と紹介されました。なんと、『柏幻想(かしわげんそう)ポーク』というブランド豚が作られていて、一流ホテルのシェフも認める、良質な霜降りの豚肉なんです。
地産地消という観点から『柏レザー』のイメージを伝えると、豚肉を取ったあとの原皮を譲ってもらえることになったんです。それを東墨田の『福島化学工業』さんに持ち込んで、なめしてもらいました。
最初は五枚くらいからスタートだったので、社長さんも苦笑していましたよ。」と飯島さんは笑う。

福島化学工業の大型のドラム。ここで革がなめされる

一般的にピッグレザーというと、靴のライニング(内側の革)で使う薄手のものが多いのですが、飯島さんは“ふっくらと厚みのある革”にこだわったとのこと。

一見しただけではピッグレザーとは思えないほどの、厚みとコシのある革素材。他には見られない、厚みのあるピッグレザーで作られたバッグは、現在柏市のふるさと納税の返礼品にもなっています。

カフェもオープンし、革と食の循環を伝える

今ではピッグレザーだけでなく、房総地区で害獣駆除されているキョン(小型の鹿)の革も利活用しています。動物が猟師に撃たれても、そのまま山林に放置されてしまうのがいまの現状です。

鹿の革は軽くて質感もよいため、手触りの良い白なめし革を「房総レザーⓇ」としてアピールし、京友禅の染めを加えて付加価値を付け、革小物などに製品化しています。

「皮革産業は、牛や豚など肉の副産物として生まれたもので、そもそもサスティナブルなものです。今まで以上に革と食との循環を伝えられないかと、昨年は飲食部門をスタートさせました。」とどこまでもパワフルな飯島さん。

2020年1月にはカフェ「PATH TRAVEL&EATS(パス トラベルアンドイーツ)」を柏市内にオープン。
5坪ほどの店舗では、コーヒーをはじめ、幻霜ポークを使ったバブルワッフルを提供し、オリジナルレザーグッズの「PATH(パス)」を店内にディスプレイ。

地域に溶け込み、地元のみなさんに喜んでもらいたいという想いは常に一貫しています。

「柏市には代表的な産業があまりありません。
それを逆手に取って、千葉県全体の資源を活用している『柏レザー』を、新しい地域資源としてアピールしていきたいと考えています。バッグにこだわらず、アフターコロナを見据えた体験型イベントなどのアイデアも今温めているところです。
ゆくゆくは“レザーのミュージアム”のようなことが出来ないか、わくわくした夢を描いています」と飯島さんは笑顔で話していました。

ローカル発のレザーが生み出す新しいコラボレーションを、今後も楽しみにしていきたいです。

「NUIZA縫EMON(ぬいざえもん) 柏」

「PATH TRAVEL&EATS」

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初出:フットウエアプレス9月号