【今年読んだ本など】個人的なトピックスまとめ

こんにちは、川崎です。

今年も「@Randum by B.A.G.Number」をご愛顧いただきありがとうございました!

業界とは関係なく、今年は個人的なトピックスまとめにしたいと思いました。売れた靴やバッグなどのまとめは、フットウエアプレス誌にも書きましたので、12月&1月号をご覧下さいませ~

で、自分の備忘録のかわりに、今年読んだ本やらハマったドラマなぞを振り返りたいと思います。

【小説など】

今年は小説を久しぶりにいろいろ読んだ気がします。

コロナ前は手軽なビジネス書みたいなものを読んで、セミナーのネタにしてたりしましたが、小説はなんか、時間がもったいないじゃんとか考えていたかも。。アホです、その発想がそもそももったいなかった!

移動時間はスマホではなく小説にシフトしてみたら、「ひとつ物語を自分に落とし込んだ」というささやかな満足感が生活のなかに生まれました。
ページを繰る度に想像だにしない展開など、誰かの人生や心象をのぞきこめる幸せ感を、久しぶりに感じたかも知れません。

さてさて、今年のベスト1は本屋大賞も受賞した「成瀬は天下を取りに行く」「成瀬は信じた道を行く」でしょうか。

まあ痛快でしたね。成瀬あかりの先が読めない突っ走り人生、ホントに信じた道をずんずん進む様が最高でした。主人公がティーンなので若い世代向きかと思えば、「自分が若い時に読みたかった」という大人の方多数。空気読みすぎて疲れてしまった大人に特にお勧めです。

原田マハさんの「さいはての彼女」は、北海道をバイクで疾走する女性が登場するので、友人から「きっと好きだと思うよ」と勧めてくれた一冊。40代くらいの“女のこじらせ”を描かせたら、天下一品の原田さん。我もイテテテと思いながら読みました。

「楽園のキャンバス」をはじめ、キュレーターである経歴を活かしてアートシーンのエピソードが奥深いのも魅力でした。

Netflixの「地面師たち」が面白すぎて、作者の方の初期小説「狭小邸宅」へ。不動産関係の仕事をされていたようで、ブラックな不動産会社の細かなディテールが痛々しいです。。でも「地面師たち」につながると思われる、上司と主人公とのピリリとした関係性などは垣間見えてゾクゾクしました。近々不動産買うという方は、一度読んでみてください、彼らの手の内がわかりますww

「水を縫う」は、河合隼雄物語賞受賞ということで手に取りました。河合さんは物語の力を信じて診療にも活用していたので、どんな物語なのだろうと。。結婚が近い姉のシンプルなドレスに、弟が刺繍を入れるまでのお話し。ただ一筋縄ではいかない家族たちや、離婚した父との関係性など不器用な登場人物の、誰かには自分を投影できる感じです。
そして刺繍男子、なかなかかっこよい。

「私の馬」は夫の積ん読棚から引っ張り出したもの。運命的に出会った「私の馬」を手に入れるまでに、ダークな世界へと足を踏み込んでしまい。。読んでいたときタイムリーに三菱UFJ銀行の貸金庫事件があり、こんな切ない裏があったのかもしれないと重ね合わせてしまいました。

「ある男」は映画がとても好きで、小説ではどう描いているのかと気になり。夫の事故死後に「別人だった」ことがわかり急転直下。謎をひもとく弁護士が在日韓国人なのですが、その立場をとてもデリケートに掬い上げていました。

話題になってた「百年の孤独」。出張先で本屋に積み上がってたので、お土産代わりに?買いました。はい、未だ読了しておらず真ん中くらいです。。翻訳ものだからなのか、なかなか大変です。Netflixの映画を先に見た方がいいかも。

【新書など】

小説以外もいくつかヒットありました。

ちょうどニュースでイランのイスラエルへの攻撃が始まった頃に読んだのが、「イランの地下世界」。イランてどんな国だったっけ?と思って手に取ってみた。

個人的にはイスラム世界というものは、人生の低層階にずーっと息づいている。19歳で人生初の海外でインドネシア。20歳の成人式の時には、父から送られたエアチケットで駐在先のシリア・ダマスカスへ。日本の常識がぜーっんぜん通じないことに、びっくりを通り越して気を失いそうになりました(リアルに)。

とはいえ、かの国の人たちはみな優しく、見たことないアジア人を歓待してくれたことも懐かしく思い出されます。そこから中東は「国家」と「国民」を切り離して見てみないといけないと思ってきました。

この作者はまだ40代くらいとお若い。10代でイランに魅せられ、20代には留学や仕事で長く現地駐在の経験があるとのこと。上から目線のペルシャ研究者などでは決してなく、本当に市井の人たちと日々を暮らしてきた“現場感”が素晴らしいです。

予想通り、ニュースで見聞きするイランの姿とは全くことなる、肌感覚のイランの“地下世界”が広がってました。地下とはいってもヤクザ的マフィア的な感じではなく、地下に潜らないと“自分らしさ”は手に入らない。特に若い時には「お酒」や「ファッション」「男女間」は自由でいたいもの。それらは、地下でないと手に入らないという国のありようが切ないです。
バリバリのイスラム国家だと思い込んでいましたが、実はその教えですら足元危うくなっていることも衝撃でした。

イランなんて興味ないという方がほとんどでしょうが、イスラム国家のイメージが気持ちよく覆されます。私たちと同じ想いをもった人たちが、あの空の下で生きていると実感できます。

「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」。今年の「書店員が選ぶノンフィクション大賞」にも選ばれました。

読まれた方も多いのでは。これは響きましたねー。日本の「読書史」を下敷きに「働き方」を重ね合わせて、見事な「本読む日々に戻ろう」を提唱してくれています。要は私たちは「働き過ぎ」なのだと。

それがまさか、本が読めないことに繋がることだとは思わず。単に時間がないだけなのではない、スマホゲームをする時間はある、でも本は読めない。その謎にこんなにぐいぐい迫る方がいることにびっくりでした。

気になる部分をメモったのでそこを引用します。

「だからこそ、本を読むと、他者の文脈に触れることができる。
自分から遠く離れた文脈に触れること、-それが読書なのである。
そして本が読めない状況とは、新しい文脈を作る余裕がないと言うことだ。
自分から離れたところにある文章を、ノイズだと思ってしまう。

そのノイズを頭に入れる余裕がない。自分に関係のあるものばかりを求めてしまう。
それは、余裕のなさゆえである。

だから私たちは、働いていると、本が読めない。
仕事以外の文脈を、取り入れる余裕がなくなるからだ。

<中略>

ハンが名付けた疲労社会とは、うつ病になりやすい社会のことを指す。
それは決して外部から支配された結果疲れるのではない。
むしろ自分から、もっとできるもっと頑張れると思い続けて、自発的にがんばりすぎて疲れてしまうのだ。

個人が頑張りすぎたくなってしまうことが、今の社会の問題点なのである。
本書の文脈に沿わせると、働きながら、本が読めなくなる位、全身全霊で働きたくなってしまうように、
個人が仕向けられているのが、現代社会なのだ。」

と、引用多めですが大切なところかと思いガッツリ。悲しいくらい現代サラリーマンそのものを描き出している気がしました。私も含めてです。。小説的なことを「ノイズ」だと思わないよう、ほどよく働くことも大切のようです。

というわけで、備忘録的読書記録でした。

また来年も良い本との出会いがありますように!皆さま良いお年をお迎えくださいませ。